933 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/08/29 10:14:38.64 /uNTcb7DO 1/7そして空気を読まずに男しか出ないむさ苦しい話を投下するよ!
新訳2の共闘を見てみなぎったから書いてみました
携帯からなので不具合あったらすみません
「…助けてくれ」
思わず浜面の口を衝いて出たのは、男が放つものとしてはかなり情けない言葉だったが、現状を見た一般人なら誰もが彼に同情するはずだ。
「た、助けてくれぇぇぇっ!」
彼がハンドルを握る真っ赤なスポーツカーは、現在何台もの黒塗りのバンに追われ、20以上の銃口から絶賛狙われ中だ。的確にタイヤと搭乗者の頭を撃ち抜こうとしてくる弾丸を避けるために夜の街を蛇行運転している。
「諦めろ!自分達でなんとかするしかねぇ!」
助手席で頭を低くしながら喚いた上条も、無能力者でしかも拳銃の扱い方も知らないほどに一般人だ。右手に宿る特殊な力も、こういう場面では全く役に立たない。
「もっとスピード上げろよ」
やたら涼しげな顔で言うのは学園都市第一位、一方通行。先ほどまで助手席の窓から身を乗り出して拳銃で応戦していたが、弾が尽きたらしく、今は上条の足元に収まっている。2人乗りの車に男が3人詰め込まれているのはかなり窮屈だが、他に車がなかったので仕方なかった。一方通行がかなり細身なお陰でギリギリ収まれている。
「既にアクセルベタ踏みしてるんだよ!法定速度とかなにそれ美味しいの!?むしろスポーツカーに追い縋ってるあっちが変なんだ!」
尚も続く一方的な銃撃になす術もなく、3人はただ逃走する。
だが状況は良くなるどころか、逆に悪くなっていた。
「ちょっと待て、これまずくないか?」
ちらりと窓の外を伺った上条が、携帯のGPSを起動させる。
「やっぱり、だんだん人気がない方に追い詰められてる!」
窓から見えたのは第23学区の看板。この先は航空関係の施設ばかりで、夜にはほとんど人がいない。つまりこの先は進めば進むほど"何でもアリ"になる。
「やっべぇぞ!もうチマチマ撃つ必要もねぇ、対戦車ミサイルとか持ち出されたら一貫の終わりだ!」
もしそんなやり過ぎな兵器を撃たれてしまえば、一方通行以外は助からないだろう。
「けどまァ、向こうが何でもできるって事は、こっちも派手に暴れられるってわけだろォが」
首に巻かれたチョーカーを指先で弄った一方通行が助手席の扉を蹴りつけると、面白いほどの勢いで扉が飛んでいく。
原型を留めないくらい無残なスクラップになりながら転がっていった扉は、一方通行の思惑通り、一台の追跡車を巻き込んでいった。
「上条、学ランの上着寄越せ」
「良いけど、何するんだ?」
「あいつらの鼻面ブチ抜いてやる」
適当な問答をした後に上着を強奪すると、一方通行はチョーカーのスイッチを切り替えスポーツカーのフロントガラスの上へ移った。
そこから運転する浜面の視界を遮らないように身を乗り出して車の後ろの方を向くと、上着からボタンを毟り取って握った。
「我らが第一位様は何をするおつもりだ!?」
浜面がバックミラーを見ながら蛇行を続ける。銃撃は車の外へ出てきた一方通行へと集中しているらしい。だがチョーカーのスイッチが入っている今は一方通行に鉛弾が当たるはずはない。
「ちょっと車揺れるからなァ。頼むぜ浜面」
それだけ言って、一方通行は握ったボタンを指で弾いた。指弾の要領で親指から打ち出されたボタンは、凄まじい風圧を纏い、まっすぐに敵へと向かってゆく。
空気抵抗に曝されたボタンはすぐに燃え尽きてしまうが、巻き起こる風の弾丸が火薬で撃ち出された鉄鋼弾の倍以上のスピードで敵陣に飛び込んだ。反動で3人が乗った車がおかしな方向へ滑ったが、浜面が悲鳴をあげながらハンドルを切ってなんとか持ち直す。
弾丸を打ち出すために右手を突き出したその姿は、上条がよく知る少女の大技によく似ていた。
「れ、超電磁砲?」
思わず口を突いて出たセリフに一方通行はバカにした様な目で助手席から覗くバカを見下ろした。
「ンなわけねェだろバカ。いつから俺は電撃使いになったンだよバカ」
一方通行が第2ボタンを千切り、先ほどと同じ様に発射して見せた。
「これはもっと単純だ。バカにもわかるように言えば第三位のは磁力で鉄を引っ張って飛ばす。コイツはただ単純にボタンを弾いてそのベクトルを操作してるだけだ」
最終的に面倒になった一方通行は上着に付いているボタンを全てもぎ取ると一気に投げつけた。凶悪過ぎる散弾に巻き込まれた敵の車が派手に転がって爆煙を上げる。
煙が晴れた時には追ってくる車はなくなっていた。
追っ手を振り切った三人は他に車や人の気配がない広い道路で車を降りる。
「…あー、派手にやってくれたぜ大将。運転してるのが俺じゃなかったら一発で横転かスリップしてスクラップになってたとこだぞ」
「うるせェ。死んでねェンだから文句言うな」
「上条さんも身が持ちませんよー。お前が無茶する奴だってわかってるけどさ」
言いながら上条が銃弾に晒されて無残な姿になった高級スポーツカーを切な気に撫でる。このスポーツカーの持ち主はどうやら自分くらい不幸な奴らしい、と少し同情してしまう。
車の違いがわかる男・浜面は、このスポーツカーでなければ乗り越えられなかっただろう直前までの死闘を思いだしながら、車に空いた穴の一つに目をやった。
そこには燃料が詰まっているはずだ。学園都市の外で作られ、輸入された車だからこそ可燃性の液体燃料が詰められている。
そして今、その燃料タンクに穴が開いて液体が漏れている。
「や、べぇ!」
漏れて広がった液体に炎が走るのが3人の目に入った時には、もう遅かった。
耳が痛くて目が覚めた。
瞼を上げても一瞬何も見えなかった。
徐々に目が慣れてきて始めに見えたのはウニみたいな黒いトゲトゲの頭。
「おう!気がついたか一方通行!」
一方通行は意識がはっきりしてきて、何が起こったのかを認識した。
「爆発、したのか」
ゆっくりと痛む体を起こすと少し離れた所でスポーツカーが燃えていた。
「間一髪のところでお前と浜面を引っ張って守れたから良かったよ。お前能力切ってただろ?」
そういう上条の背中は白いシャツが煤けて血が滲んでいる。浜面は燃える車を未練がましく見つめている。
「もったいねぇ…いや既に穴だらけだったけど…」
一方通行は立ち上がると、なす術もなく車を眺める2人に声をかけた。
「さァて、俺たちを追い回した挙げ句無茶苦茶撃ってきやがったバカどもの頭を潰しに行くとしよォか」
その言葉に、上条と浜面が拳を握った。
「あぁ、高級車の価値わからせてやるぜ」
「街中で銃撃戦やカーチェイス始めるおバカさんには、上条さんのお説教が必要ですね」
手を組んだ三人のヒーロー達の、反撃が始まる。
939 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/08/29 10:19:32.21 /uNTcb7DO 7/7
以上です。
お粗末様でした。
毎回中途半端なものばかり投下して申し訳ないんだが、長編書く根性ないんだ。