833 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/10/18 18:19:16.75 R/DGOCyTo 1/9


シリアス風味で数レス借りるよん
文章稚拙なのは勘弁な!

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-33冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1314623016/
834 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/10/18 18:19:50.44 R/DGOCyTo 2/9


――8月15日



「現在時刻は二〇時五〇分です。第九九八二次実験の開始まで後九分五〇秒ほどですが、準備はよろしいですか?」


 気無い路地裏の一角、無表情な少女が感情を感じさせない無機質な声で
目の前でぼんやりと空を見上げている少年に向かって声をかける。
夏とは言え日は既に落ちており、辺りはすっかり暗くなっている。


「……」


その声に反応した、髪も肌も真っ白い少年はゆっくりと視線を下げ、
少女の顔をチラリと一瞥すると、返事をするのも億劫だと言わんばかりの態度で軽く頷き、
再び少女から視線を逸らす。少女に負けず劣らずの無表情で、少年はただ視線を宙に泳がせる。
その瞳に生気は無く、ひたすらに薄暗い。

835 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/10/18 18:20:22.11 R/DGOCyTo 3/9


「実験前……いえ、実験中も、あなたはミサカ達をあまり見ようとしませんね?
とミサカは被験者・一方通行の失礼な態度を指摘します」

「……人形が、人間みてェな口きいてンじゃねェよ。オマエらは必要な時以外は黙ってりゃいいンだ」


少女の指摘に、一方通行(アクセラレータ)とよばれた少年は、やはり彼女の方をはっきりと見ることなく、
チッ、と舌打ちをしながらぞんざいに、しかし感情の篭らない平坦な調子で吐き捨てる。
人形と呼ばれた少女は特段それを気にする素振りも見せず、そうですか、と無表情のまま頷くと、それきり口を噤んだ。

沈黙の中、両者の間には路地裏の壁に設置された照明器具にぶつかる羽虫の音だけがパチパチと響いている。


「実験開始まで残り五分を切りました。戦闘準備を開始します」


何処を見ているかわからない一方通行を尻目に少女は独り言のように呟くと、
担いでいた楽器ケースを下ろし、それを開く。その中から取り出された物は楽器ではなく、
名門中学校の制服に身を包む少女が携帯するにはあまりにも似つかわしくない物騒な代物であった。

836 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/10/18 18:20:48.49 R/DGOCyTo 4/9



「実験開始まで残り三分三〇秒。再度確認します、準備はよろしいでしょうか……おや?」


ケースから取り出したサブマシンガンの各部をチェックし終えた少女は再び問いかけながら一方通行へと視線を向ける。
と、今まで視線を遊ばせていた彼の目が、じっと自分を見つめていることに気付いた。
正確には、自分の脇腹の辺りを。


「もしや、この缶バッジが気になっているのですか?
とミサカは不躾な視線をぶつけてくる一方通行に尋ねます」

「……」


一方通行の視線の先にあるのが自分の服に着いている缶バッジだと当たりをつけた少女は、
バッジを指で摘み、一方通行に向かって軽く突き出しながら首を傾げる。
一方通行はその問いかけにも答えなかったが、しかしその視線はやはりそのバッジに注がれているようだった。


「こんな幼児向けのマスコットキャラクターが描かれたバッジが気になるなど、
あなたもお姉様と同じくお子様趣味なのですか?とミサカは超能力者勢のセンスに愕然とします」

「……お姉様?オリジナルの、超電磁砲の事か?」


少女の言葉の大半を無視し、一方通行は一点だけを彼女に聞き返す。

837 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/10/18 18:21:15.74 R/DGOCyTo 5/9



「はい、ミサカ達の素体である第三位の超能力者・御坂美琴の事です、とミサカは肯定します。
このバッジは今日の夕方にお姉様から頂いた大事な物です。ですからあなたに差し上げることは出来ません」

「大事な物……か」


一方通行はぽつりと呟くと、愛おしげに缶バッジを手のひらで包み込む少女から再度視線を逸らす。
しかし逸らされた視線は宙空を彷徨うことなく、ただ己の足元一点だけに向けられた。
まるで何か思い詰め、考え込むかのように。


「……聞きてェ事がある」


やがて、一方通行は視線を上げ、少女の顔を正面に見据えながら彼女に語りかける。
その表情こそ相変わらず感情を表さず、声の調子も平坦なままだったが、
しかしその瞳には微かに、何か期待しているような光が灯っていた。


「実験開始までもう時間がありません。手短にお願いします」


実験の開始時刻までもう二分を切ろうとしている。
このタイミングで一方通行が話しかけてくると言うパターンは過去に例がない。
そもそもここ二、三千回程の実験前にはろくに会話をした記憶も無いのだ。
少女は僅かな動揺を覚えつつも一方通行に先を促した。

838 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/10/18 18:21:43.72 R/DGOCyTo 6/9



「オリジナルと会って、オマエに何か変化はあったか?」

「変化、ですか?ミサカの身体を構成している物質的な変化は恐らく無かったでしょう。
もし精神的な変化の事を言っているのでしたら、それはミサカ達には理解出来ない事ですからわかりません。
しかしこれと言ってお姉様から影響を受けた点は観測出来ませんが
とミサカは一方通行に返答します」

「……もう一つ。オマエは人間か、それとも人形か、どっちだ?」


実験開始まで、残り一分。


「あなたがその質問をするのは随分久しぶりですね。
最後にそういった意味の質問を受けたのは確か第六二四九次実験の前だったと記憶していますが、
しかしその問いには何度も答えたはずですよ?
とミサカは過去幾度と無く一方通行とミサカ達の間で交わされた問答を振り返ります」

「その時答えたのはオマエじゃなくて別の奴だろ?オマエは自分の事をどう思ってンだ?
オマエの口で答えろよ、オマエは――」

「ご安心ください、一方通行」


一方通行の言葉を遮るようにして少女は口を開く。
実験開始まで残り約三〇秒。そろそろ、会話は打ち切らなければならない。

839 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga] - 2011/10/18 18:22:13.29 R/DGOCyTo 7/9



「過去に他のミサカ達が答えたように、このミサカもまた絶対能力進化の為だけに製造された、
単価にして一八万円のただの人形です、とミサカはミサカ達の考えにブレが無い事を報告します」

「………」

「ですので、ミサカ達を破壊する事をあなたが躊躇する理由はありませんし、
また破壊した後に罪悪感を感じる必要も一切ありません、とミサカは――」

「もォいい、わかった」


一方通行の瞳がどろりと濁る。
彼はもう、少女の方を見ていなかった。


「……時間になりました。これより第九九八二次実験を開始します」


暗視ゴーグルを装着しつつ、少女は実験の始まりを告げる。
時刻は二一時〇〇分きっかり。『絶対能力進化』は滞る事無く、この日も平常通り開始された。


840 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga] - 2011/10/18 18:22:41.30 R/DGOCyTo 8/9


終わり終わりー
そのうちこんな感じでスレ立てたいにゃー

841 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage] - 2011/10/18 18:39:10.73 Y0zK7D1SO 9/9



続きが凄い気になる