720 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[sage] - 2012/08/08 04:04:23.92 QDM1E+bmo 1/5ちょっと借りますよ。
一方通行がもしも不殺主義者だったらなIFものです。
「……ミサカを殺さないのですか? と、ミサカ00001号は一向にミサカを殺そうとしない一方通行に問いかけます」
「ふざけンな」
さらさらと、埃混じりの風に白いシルクのような髪が靡く。
吐き捨てるような乱雑な言葉とは裏腹に、肌すらも箱入りのお姫様のように真っ白な少年は、優しく少女を瓦礫の山から引っ張り上げた。
「俺は殺しはしねェ。そう決めたんだ」
「あぁ、赤いコートにとんがり頭な人のようにですね、とミサカは学習装置にあったとある漫画の主人公を提示してみます」
「いや知らねェし」
少女を引きあげると共に、瓦礫がガラガラと崩れてはまた瓦礫と化す。
辺りを見回せば、いっそ感心してしまうほどにすがすがしいくらい荒れ果てた―――いや、壊れ果てた廃墟だった。
これが元は最新鋭の設備を備えた新築半年の研究所だったなどと、初見の人間に果たして気付けるだろうか。
ましてや、この有様を作り上げたのが、いっそ病弱と言って良いほどに真っ白い、少女のように端整な少年である等、誰が気付くのか。
「学園都市第一位という割に、何も知らないのですね。とミサカは第一位の教養の無さに内心薄ら笑います」
「おゥコラ、なんならテメェもこの愉快な瓦礫のお仲間さんにしてやってもいいんだぜ?」
「殺しはしないのでは?」
「瓦礫の十字架に磔に決まってンだろ。そンで往来の十字路のど真ン中にブッ刺して羞恥プレイの始まりだクソが」
「……第一位は羞恥プレイがお好き。と、ミサカは心の中で決して消えないパピルスにメモします」
「……もいっぺん学習装置にブッ込むぞクソアマが」
「半分冗談です」
「……あー、もういい。いいからとっとと立て。腕掴みっぱなしなのもたりィンだよ」
瓦礫から引き揚げられた少女は、少年の手から離れて立とうとするも、力が入らないのかその場にへたり込んでしまう。
ソレを見て軽く舌打ちする少年に、少女は気にする風でも無く問いかけた。
「ですが、ミサカを殺さないと実験は終わりませんよ。と、ミサカはわかりきった事を伝えます」
「ァ~……それな。殺さないでやる事に決めた。今決めた」
「……こいつは一体何を言ってるんでしょうか。と、ミサカは目の前の白モヤシを半目でねめつけました」
「テメェ終始無表情じゃねェか。裸にひンむくぞコラ」
「やっぱり羞恥プレイに持ちこむつもりですね。と、ミサカはしたり顔で先程のネタを引っ張ります」
「……とりあえず、一回目の実験はテメェの戦闘不能で終わりだ。死んだら戦えねェンだし、どっちだって同じだろ」
「スルーされました」
「チッ……いいから行くぞ」
そう言って、白い少年は瓦礫の中からたまたま無事だった白衣を拾い上げ、どういった力を用いたのか、一瞬でソレにまとわりついていた汚れを払うと、少女へと差し出した。
少女はそれを受け取り、ほとんど衣服としての体裁を保っていない服を脱ぎ捨てると、裸身に白衣一枚、見る者が見れば発狂しかねない危うい恰好となる。
そして、ぐっと力を入れて立ちあがりながら、少女は少年へとさらに言葉を投げかけた。
「このまま放置でいいのですか? と、ミサカはさっさと立ち去ろうとする第一位を呼びとめます」
「どうせあのクソ野郎どもはゴキブリみてェに生き残ってるだろうし、あとであっちから連絡よこすだろ」
「……〝絶対能力進化実験〟は、学園都市主導の重要な実験です。貴方の我儘程度でどうにかなるものではありませんよ? と、ミサカは敢えてわかりきった事を問いかけます」
「―――――ハッ!」
一際大きく、少年は鼻で笑う。
そして大して大きくないその背中を向けたまま顔だけを振り返らせ、逆に少女に問うた。
「―――――この俺を誰だと思ってやがる?」
「―――――学園都市が誇る七人の超能力者。そして、その序列第一位。と、ミサカは詰まることなくスラスラと答えて見せます」
少女の答えに満足したのだろう。少年は顔を振り返らせたまま口角をつりあげ、まるで悪魔のような笑みと共に「そうだ」とだけ答えた。
歩きだす少年の後を追うように、少女はその頼りない足取りで一歩を踏み出す。
それは、初めて少女が踏み出した、自分でも意味のわからない一歩だった。
命令でもなく。強制でもなく。しかし、願いや頼みでもない一歩。自分の意志で、自分の行く道を決めた、初めての一歩だ。
自分でも意味もわからず、一歩を踏み出したまま立ち止まる少女に、唐突に言葉が投げかけられた。
「あァ、それと」
「はい? と、ミサカは首を傾げながら返事をします」
「一方通行/アクセラレータ」
「はぁ、貴方の名前ですね。存じ上げておりますが。と、ミサカはいまいち要領を得ない貴方の発言にイラっとしました」
「〝これから〟はそう呼べ。第一位だのなンだのクソ忌々しい呼び名はヤメろ」
「しかし、一方通行も似たようなものでは? と、ミサカは疑問を覚えながらも貴方のよくわからない感性についていけずに辟易します」
「バァ~カ」
今度は楽しそうに。
少年は、先程と同じように振り向いて、破顔した。
「気に入ってンだよ。この通り名はな」
その笑顔は、少女の様に純粋で、そして少年の様に無邪気なものだった。
少女はそんな年相応の少年の笑みを見て、それまでぴくりとも買える事の無かった仮面を崩し、薄く微笑みながら答える。
「……なるほど、得心しました。と、ミサカは了解した事の意を伝えつつ、貴方の傍へと歩み寄ります」
「……オラ、さっさと行くぞ」
「急かさないでください。誰かさんの所為で歩くのも大変なのですから。と、ミサカは厭味ったらしく返事します」
「へーへー、そりャすンませンでしたァー」
並び歩く二人の少年と少女。
その背後には凄惨な瓦礫の山が。そして、その頭上には青白い月光の祝福があり、二人の歩む道先をほんのりと、そして静かに照らし続けていた。
724 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(長屋)[sage] - 2012/08/08 04:14:40.39 QDM1E+bmo 5/5短いですが、以上にござる。
初投稿故ぐっだぐだで短小なうえ、あろうことか一方通行の喋り方をところどころ変換ミスってるなど申し開きもございませぬorz
いちいち変換するの面倒だよ! かまちー面倒な口調の設定いいかげんにしろ!
いつか全部書けるといいなぁ、なんて夢を見ながらおやすみなさい。