755 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:35:50.65 a30U1/wm0 1/14

美琴とインデックスで、11スレほどいただきます。

元スレ
▽【禁書目録】「とあるシリーズSS総合スレ」-40冊目-【超電磁砲】
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379543420/
756 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:37:56.08 a30U1/wm0 2/14


ある日の放課後、私は学舎の園を出て、あの公園に来ていた。
別にやることもなかったし、ひょっとしたら、アイツに会えるかな…なんて。

残念ながらアイツは見当たらなかったけど、その代わりと言っていいのかどうか、「あの」シスターがベンチに座っていた。
珍しい。それとも私が知らないだけで、しょっちゅうここにきているのだろうか。

「…おっす、アンタ一人?」
「あ、短髪。今、ひょうかと話してたところなんだよ。もういっちゃったけど」

いい加減にその呼び方をどうにかしろ。
青筋が立ちそうになるのをグッとこらえる。私はあまり変な呼び方をされるのは好きじゃない。
ただ、せっかくこちらから声を掛けたのに5秒で喧嘩にしようとは思わない。

こっちもなんとなくで話しかけたわけじゃないのだ。
どうやらさっきまで友達と会っていたらしい彼女に、色々確かめたいことがあった。

「アンタちょっと時間ある?もしよければさ、ちょろーっと聞きたいことが―」
「とうまのこと?」

ノータイムで返される。
見透かしたような顔をするな。そんな私はわかりやすいのか。
一気に顔が赤くなる。
これからするのは、ちょいと踏み込んだ質問だ。だというのに、先手を取られた感じは否めない。

「いや、そうなんだけどさ…
 …あの、さ、アンタ、アイツと……どういう関係なの?
 前に私がアイツの家の前まで行ったとき、アンタ家の中にいたような」
「一緒に住んでるんだよ」


ゲームセット。



757 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:39:19.40 a30U1/wm0 3/14





「……ホントにとうまはいつもいつもいつもいつもいーっつも、危ないところに首を突っ込んで!
 止めてもきかないんだよ!」
「ホントよね…ったくアイツはなんで毎回ああなのかしら…」

がおー、と両手を振り回すちびっこシスター。
その横で、私はちょっと前の茫然自失から回復していた。


(「ア、アンタ、アイツの、恋人、なの?」)
(「…家族、の方が近いかも」)


ぶすっとした顔をして、今はまだ、と言いたげだったが、それでも私は胸を撫で下ろした。
もういい加減、私は自分のこの気持ちに嘘を吐けなくなっているのだ。

とりあえずの失恋を免れたことで、私はコイツとのお喋りを再開することにした。
…結局私とインデックスの共通の話題なんて一つで、誰かさんの愚痴大会になってしまったが。


758 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:40:59.43 a30U1/wm0 4/14


「だいたい、とうまは無節操すぎるかも!
 誰彼構わず助けようとするのはまあいいよ、私もそうやって助けられたんだから。
 でも毎回毎回右手を構えて突っ込んでいって、誰かを救って大怪我して!
 ちょっとは専門家の私の話を聞いて、準備万端にして戦うことだってできるんじゃないのかな!?
 そもそもいつもとうまが戦う必要だってないんだし!
 おまけに毎回別の女にフラグを立てるってどういうこと!?
 とうまはあれかな、命を賭けたナンパ師でもやってるのかな!?」

インデックスが両手を振り上げる。
コイツはきっと、私よりずっと多く、アイツが「危ないところに首を突っ込む」ところを見てきたんだろう。
あの第3次世界大戦の前、満身創痍だったアイツと私が鉢合わせたあのときより前からずっと。

しかし「専門家」ねえ。
私も、今では私たち学園都市の人間が使うのとは違う法則があるということくらいは理解している。
そして、コイツはそのエキスパート。
見かけによらないというか、その胡散臭いシスター姿からすればさもありなんというというか。

つーか、不満の大部分は最後だろアンタ。
さすがにアイツだって女の子を狙って助けているわけではない…よね?
このシスターからすれば私もその「別の女」に入るのだろうか。

アイツは釣り上げた魚に餌はやらないというか、釣り上げた事にすら気付いてないから困る。
キャッチ・アンド・リリースどころじゃない。

…いや、しっかり釣り上げてリリースしてない魚が一人いたか。
私の目の前のコイツ。だからこそのこの不満。ちくしょう羨ましい。

759 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:42:38.84 a30U1/wm0 5/14



ただまあ、似たような不満は正直私も持っている。
端的に言うなら、「もっと頼ってくれてもいいんじゃないか」ってことだ。

0930事件のときはそこそこ力を貸した。
アイツがイギリスに行っていたらしいときも、電話で助けを求められた。
でも、私が自分の中のその想いに気付いた日、満身創痍のアイツは私に助けを求めなかった。

そして忘れもしない、ロシア上空でも。
アイツを助けられなかったことを、私がどれだけ悔やんだか。
あの落ちていく瞬間を、私は何度も悪夢に見た。

しょうがないから一年発起してハワイについていったら、今度は現地で置き去りだ。
泣きたくなる。

「とうまは親しい人、身近な人は危険な目に会わせたくないと思ってるんだよ。
 私なんて、ハワイに連れて行ってももらえなかったし。
 …よかったね、短髪」

どういう種類の皮肉だコラ。
しかもその言い方だと自慢に聞こえるぞ。

かつて私は、「部外者は係わるな」的な感じでアイツから助けを拒絶された。
それから色々あって、少しは距離が近づいたと思ったら、今度はアイツの身近になりすぎたせいで遠ざけられた。
どうしろっちゅーの。


760 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:44:43.57 a30U1/wm0 6/14



「アイツも船の墓場に行く途中、やっと全面的に私たちを頼ってくれたと思ったのにねえ…」
「…うん。今度はオティヌスと地球の裏側まで二人旅。
 私たちはまたおいてけぼりかも」

あのときアイツに「お前たちの力を貸してくれ」と言われたときの高揚は、インデックスならわかってくれる。
いや、インデックスだからこそ、か。
助けようと差し出した手をスルーされていた私に、待たされ続けていたインデックス。
私たちがどれほど、その言葉を望んでいたか。

それなのにその数時間後(アイツ視点では数億年後になるのか?ややこしい)には、私たちに何の説明も無く世界中を相手にしようとする。
こっちは船の墓場にまたしても置き去りだ。
あのときの感動を返せ。

…まあ、その後思いっきりアイツを疑ってしまったワタシは何とも言えないけどさ。

そういえばオティヌスはどうしてる?と聞くと、あの小さい身体で、基本アイツにくっついているらしい。
ちくしょう羨ましい(二回目)。

「うー、あのバカはどうやったらもっと私を―」
「ねえ」

頭をかきむしる私が横を見ると、いつの間にかインデックスは何かを見透かそうとするような、いつもと違うシスターの目で私を見ていた。


761 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:46:28.61 a30U1/wm0 7/14




「短髪は、なんでとうまに力を貸してくれるの?」
「なんでって、…それは」



「――短髪は、とうまが好きなの?」



「…うん、好き」



「そっか。私もとうまのことが好きかも」

その語尾だと、言い切ってるのかどうかわからないだろうが。

というかなんだこれ。なんでこうなった。
どうして私たちは恋敵と暴露合戦やってんだ。
まだ誰にもはっきり言った事のないこの想いを、なんでよりによってこのシスターに。

いやまあ、お互い薄々分かってたことだけどさ。
あの地下街で会ったときから。


762 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:48:56.92 a30U1/wm0 8/14



「それで、短髪はなんでとうまを助けようとするの?」
「…いや、アンタはどうなのよ」
「私は、とうまの家族みたいなものだもん。短髪は?
 やっぱり好きだから?それとも前に助けられたって言ってたよね。その恩があるから?
『ゴオントホウコウ』ってやつなの?」

「御恩と奉公」な。変なところで知識の偏りがあるシスターだ。

…さて、私がアイツを助けるのは何でだ?

コイツの言うとおり、好きだからか?恩を返すためか?
ロシアに行ったときはそうだったような気がする。
でも、今は?

インデックスは分かりやすい。
何しろ一緒に住んでいるんだし、家族も同然。なら、助けるのも当然。
私は…友達だから、ってことでダメだろうか。

…いや、違うな。私はもっと深い関係になりたいと想ってる。
あれ?それならもっと分かりやすくないか?
でもそれじゃ、インデックスの言う通りじゃ…。

763 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:50:39.57 a30U1/wm0 9/14



待てよ、とふと思った。

アイツは近しい人を戦場から遠ざける。
究極的なことを言えば、もし、アイツと想い合うようになることと、アイツを助けることのどちらかを選ばなければならなくなったら、私はどうする?

もちろん、その二つは両立できる。…はずだ。
アイツに誰より近い目の前のシスターだって、あのとき一緒に助けを求められた。

でも、もしも、私がアイツと望む関係になれなかったとして、それでも私はアイツに力を貸すだろうか――。




―――当たり前だ。何度だって、命を賭けてやる。



「違うわ」
「違うって、何が?」

764 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:53:39.40 a30U1/wm0 10/14



「確かに私はアイツが好き。アイツに対する恩もある。
 でもね、アイツに力を貸すのに特段の理由なんていらないわ。
 『私があの馬鹿を助けたいから』助けるのよ。
 それ以上でもそれ以下でもない」

アンタ、「いつだってとうまは帰ってきてくれる」って言ってたわよね?
ただ信じて待ってるだけなんて、よくそんな辛い選択ができたわね。

アンタももういい加減それに耐え切れなくなったのね。
当然だ。私だったら、ハナからそんな道は選べない。

アイツが迷っているなら背中を叩いて送り出す。
間違っているなら殴ってでも引き戻す。
そして戦っているなら…私も戦う。

もしアイツが傷つくなら、私がその傷をせめて半分でも肩代わりする。
アイツが命を賭けるなら、私の命もチップに上乗せする。

アイツはきっと望まない。それどころか怒るだろう。
でも、できるのなら、私はそうしたいんだ。
インデックスほど大人じゃない私は、インデックスほど強くない私は、例え自己満足であっても、そうしてやりたいと思ってるんだ。


765 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:55:17.98 a30U1/wm0 11/14



「まあ、下心があるのかもってのは否定しないけどねー。
 私はアイツと違って困っている人なら誰でも助けようなんて善人でもないし」
「…そんなこと言って、私から見れば単発だって充分お人好しに見えるかも。
 どうせ誰かに助けを求められたら、すっ飛んでいくに決まってるんだよ」

インデックスがボソッと言う。それはお互い様じゃないの?
アイツみたいなお人好しの近くにいるアンタが、善人じゃないなんて言わせないわよ。


インデックスが立ち上がった。
私は訝しむが、時計を見ると結構な時間が経っていた。
そろそろ帰る頃合だ。
私は学舎の園の女子寮へ、コイツはアイツが住んでるあの部屋へ。ちくしょう羨ましい(三回目)。

「ねえ、短髪」
「アンタねえ、いつまでそんな失礼な―」

膝に両手を付いて、同じくベンチを立ち上がる私に、インデックスが声を掛けてきた。
相変わらずの呼び名に反射的に噛み付きながらそちらを向く私に、

…インデックスが片手を差し出していた。


766 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 18:57:30.76 a30U1/wm0 12/14



「短髪は、これからもとうまに力を貸してくれるんだよね?」
「…ええ、もちろんよ。アンタも、でしょ?」

「うん。私もだよ。…よろしくね、短髪。」
「み・さ・か・み・こ・と!」
「…よろしくね、みこと!」
「こっちこそよろしく。インデックス」

インデックスが差し出した手を握る。
私たちだけの、小さな小さな同盟成立だ。

きっと、アイツを助けたいヤツは他にもいるだろう。
私たちよりずっと強いヤツだって。
それに何より、アイツが立ち向かうものは、私たちの力よりずっとずっと大きいのかもしれない。

でもそんなことは関係ない。
私もインデックスも、お互いアイツに想いが通じる日が来なかったとしても、例えその希望が無くなったとしても。
私たちは、アイツの力になろうとし続ける。目の前の新しい友達に誓って。

約束だ。




「あ、でも一応言っておくけど、とうまは私のなんだよ」
「…しょっぱなからそれかよオイ」


767 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 19:02:00.13 a30U1/wm0 13/14


以上です。
新約8巻を読み返した勢いで書きました。
この2人はこんな感じが理想。



…ホントはこっから仲良く3Pする展開にしたかった。
それでは失礼します。

768 : VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[sage] - 2014/12/03 19:07:22.67 a30U1/wm0 14/14

>>755
…そして11スレじゃなくて、11レスだorz
お目汚し失礼しました…